福島県の原発災害は時間の経過とともに混迷がますます深まってきております。この災害からもっとも影響を被るのは小さな子どもたちです。これから何十年もこの災害と向き合い生きていかなければなりません。大人社会が、日本がこのことにどう対処するかが今問われています。
東日本大震災による原子力災害は社会システムの不合理性を露呈した「文明の災禍」です。これまでの社会システムに対して何の疑いもない際限なき豊かさの享受がもたらしたものです。そして我々建築家もそのことに少なからず加担をしてきました。福島地域会は地元の立場としてより責任は重大です。
福島県は昨年11月「原発に依存しない新生福島の創造」を発表しました。福島地域会は福島の復興から「社会システム」を変える一助としての行動を起こします。我々自らが真摯に職能を再考し、福島の建築家としての理念を宣言し全国に発信します。
宣言文
戦後我々は文明と文化を混同し、自然の摂理を超え、湯水のごとくエネルギーを多用する社会を構築してきました。3.11東日本大震災と、それに続く福島第一原子力発電所の事故は、単に脱原発のみではなく、これまでの社会システムとの決別を意味していると考えます。今のシステムが続く限り、大量なエネルギー消費は変わらず、結果として地球に、地域に、そして人にも多大なる影響を与えることになるのです。
我が国は古には、天地を父母とし、山川石木に神の存在を見、生きとし生けるもの全てを敬い、自然と共に生活してきました。また一方では異国の文化をうまく受け入れながらも、戦前までは世界一清潔でありながら、エコロジカルな住まい、町、都市を実現してきています。
我々JIA福島地域会は、日本を先導する建築家集団として、今一度この我が国のすばらしい、人に優しく、地域に優しく、地球に優しい「日本の生き方」を見直し、大量エネルギー消費に依存しない新しい社会のためのシステムの構築を目指し、ここ福島から「日本」を始めることを宣言します。
=日本始導=
・今後生まれ来る子供達、そしてすべての生命のために、我々にできることは何かを常に考え、それを我々のすべての活動の行動規範とし、建築家として、そして人間としての責務を果たします。
・万物を慈しみ、建築を大切に使い続ける心を持ち、また大切に使い続けることができる建築を心がけ、地球環境を守り続けるための責務を果たします。
・美しい「日本」の四季の移ろいを五感で感じられ、かけがえのない地球に大きな負担をかけない、地域の自然と共に生きる、真に豊かな住宅、建築、都市のあり方、住まい方を追求します。
・自然を大切にし、地域の気候風土にあった人間味のある、エコロジカルでありながら、快適で健康的な、住宅、建築、都市に係わる技術の研鑽に励みます。
・新しい社会システム構築のために、これらの地球に、地域に、そして人に優しい技術や、住宅、建築、都市のあり方、住まい方の普及につとめ、ここ福島から全国に、そして世界に発信します。
(社)日本建築家協会東北支部福島地域会 会長 辺見美津男